仕事ができる人とは~スキルを超えた「センス」~

【社長のメッセージ】2026/03/06

違和感に気づく力

 3月から玄関の絵が新しくなりました。ジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」です。週末の穏やかなひとときを描いた名作ですが、よく見るとこの絵は違和感だらけです。
 なぜ、ずっと時が止まっているように感じるのか? なぜ人がたくさん描かれているのに人の気配を感じないのか?
 こうした「微かな違和感」に気づく力は、実務において、お客様や仲間の表情や声のトーンから「潜在的な要求」をくみ取る力の訓練になると考えています。

「仕事ができる」の正体

 本題に入ります。「仕事ができる人」とはどういう人か。一言で言えば「頼りになる人」です。「安心して任せられる」「この人なら何とかしてくれる」、もっと言えば「この人じゃないとだめだ」と思わせる。それが本当の意味で仕事ができる人です。一方、知識と技術力を持っていても、いざ仕事を任せようと考えたとき不安を感じさせる人を仕事ができる人とは言えません。
 一橋大学の楠木健教授は、これを「スキル(技能)」と「センス」の違いで説明しています。

 例えば「異性にモテる」というのはセンスです。それをスキルと勘違いすると、「顔の洗い方」や「爪の磨き方」といった努力に走ってしまいます。確かに「清潔であること」はスキルとして習得可能ですが、「すごく清潔なのに、なぜか清潔感がない(モテない)人」は存在します。
 「モテる」とは、スキルの積み重ねではなく、その人が持つ「センス」の結果です。

なぜ「センス」が必要なのか

 世の中には、ロジカルシンキングや様々なフレームワークを駆使しても問題解決ができない人や、プレゼンの技術は高いのに話が全く響かない人がいます。彼らは「作業」は得意でも、本当の意味での「仕事」ができていない。つまり、スキルはあってもセンスが足りていないのです。

 当社は、社員の皆さんが「いつでも転職できる実力」を持つ機会を提供することを経営方針で明記しています。特定の分野でしか使えないスキルに対し、センスは圧倒的な汎用性(どこでも使える)を持っています。リアルの営業でセンスがある人は、オンラインでも、あるいは人事の仕事でも成果を出せます。「相手が本当は何を欲しているのか」を見抜く力は、職種を問わず一生の武器になります。

センスはどう磨くのか

 スキルには教科書がありますが、センスに教科書はありません。しかし、センスは決して先天的な才能ではありません。センスは自らが「錬成」するものです。当社には高いセンスによって生み出された製品やサービス、改善が数多くあります。お客様が当社の製品を選んだ決め手こそが、センスの結果です。最近の事例から挙げるなら、新製品ID-200Tにあります。この製品の「自動校正機能」に お客様は画期的だと笑顔を見せてくれますが、高度な最先端の技術を投入したからではありません。お客様が日常で感じる煩(わずら)わしい作業を想像し、自分事として捉え直した結果です。

 モテる人のセンスも仕事のセンスも「相手の要求を外さない能力」に他なりません。センスを磨くためには、身近にいる「センスのある人」を一人選んで、よく観察することです。野球に詳しくない人でも、公園で草野球をしている人達の中から、センスがいい人が誰なのかが分かるように、職場でもセンスが有る人と無い人の違いは容易に見分けがつきます。その人はある局面で、なぜそうしたのか。なぜ「あえて」そうしなかったのか。漫然と見るのではなく、考えながら見る。この作業を続けていくうちに、センスの輪郭がだんだんと見えてくると思います。