自ら機会を創り出し、機会によって自らを変える

【社長のメッセージ】2025/05/07

 私が最近読んで感銘を受けた一冊の本を紹介したいと思います。それは、経営コンサルタントの山口周氏の最新刊『人生の経営戦略』です。
 山口氏の著書といえば、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』が有名ですが、今回の本は、私たちの「人生」そのものを一つのプロジェクトとして捉え、経営戦略論をはじめとする経営学の知見を応用するという、非常にユニークな視点を提供してくれます。

 著書の中で、重要なキーワードとして、孔子の「これを知るものは、これを好むものに如(し)かず。これを好むものは、これを楽しむものに如(し)かず」という一節が紹介されています。
 これは、私たちが何かを成し遂げようとする時、その対象について単に知識として「知っている」だけでは、それを心から「好んでいる」人には及ばない、という意味です。さらに、ただ「好んでいる」という段階でも、その活動自体を心から「楽しんでいる」人には到底かなわない、と説いています。

 例えば、仕事に置き換えて考えてみると、業務の内容や手順を知識として理解しているだけの人と、その仕事に興味や関心を持ち、積極的に取り組んでいる人とでは、成果や成長の度合いに大きな差が出るのは想像に難くありません。
 しかし、本当に力を発揮し、周囲を巻き込み、革新的な成果を生み出すのは、その仕事そのものを面白いと感じ、夢中になって取り組んでいる人です。楽しんでいる人は、困難に直面してもそれを乗り越えるエネルギーを持ち、自ら進んで改善や新しい方法を模索します。

 私たちは、ともすると仕事や勝負の世界では「楽しむ」という感覚は二の次になりがちです。「つらいことでも頑張らねば」「嫌なことでも続けなければ」と、成果を出すために無理をしてしまうこともあります。しかし、本当に大きな成果を上げたいのであれば、むしろ逆。「楽しむ」という気持ちこそが、私たちを前進させる大きな原動力になるのだと、この本は教えてくれます。

 また、将棋の羽生善治氏の言葉も紹介されています。「将棋って、とにかく長くやっていくものなので、十年二十年経ってくると、素質はあまり関係なくなってくるんです。根気よく粘り強く続けられることの方が資質とか才能より大事な要素なのかなと思っています。」

 これは、私たちのキャリア、そして人生という超長期のプロジェクトにおいても、とても重要な示唆を与えてくれます。ストレスが少なく、今出来ることばかりに目を向けるのではなく、「長く続けられるかどうか」という視点を持つこと。健康寿命が延び、多くの人が長く働く時代において、この視点はますます重要になってきます。皆さんも、ぜひ自身の人生を振り返ってみてください。他人と比較して際立って長い時間を費やしてきた活動の中に、皆さんならではの知識やスキルが培われているはずです。
 そして、「経験とは良質な失敗のこと」。私たちは、予期せぬ結果に直面した時、自身の考え方や行動を修正する機会を得ます。「何もかも想定通りにうまくいっている」状態は、実は「学習が停滞した状態」とも言えるのです。失敗を恐れず、積極的に挑戦することから、私たちは多くのことを学び、成長することができます。

 最後に、最も重要なメッセージです。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」。

 貴重な機会が向こうから与えられるのを待っているだけでは、あっという間にビジネスパーソンとしての旬が過ぎてしまい、定年退職を迎えてしまう可能性があります。なぜなら、一般的な組織では、成果を重視するあまり、どうしても得意な人に仕事が集中しがちだからです。
 この状況を打破し、自身の成長を加速させるためには、受け身で「良い機会を得られる機会」を待つのではなく、自ら積極的に「良質な経験を得られる機会」を創り出す行動が不可欠です。
 それは、新しいプロジェクトへの提案、他部署との連携、社外活動への参加など、これまで担当してきた業務の範囲を超えた挑戦を意味します。

 「良い機会は向こうからやってくるのを待つのではなく、自ら創り出すものだ」

 この本の根底にあるこのメッセージが、皆さんにとって、自身の人生をより深く考え、主体的に行動するためのヒントとなり、日々の仕事において、そして自身の人生において、実り大きなものになることを心から願っています。  皆さんのさらなる成長と活躍を心から応援しています。