
【社長のメッセージ】2026/5/8
対話型AI「ChatGPT」に、今年の東京大学の入試問題(前期日程)を解かせたところ、文科一類から理科三類まで、すべてで合格者最高点を上回り、“トップ合格”の成績を出したという報道がありました。2024年の問題では合格点に届いていなかったことを考えると、わずか1年ほどの間に、AIの計算力や論理展開力は大きく進化したことになります。
将来、大学入試そのものも、「AIを使わせた上で選抜する」方向へ進むかもしれません。その代わり、問題はさらに難しくなるでしょう。
例えば、これまでの試験が「この数式を解け」だったとすれば、AI活用が前提の試験では、「この社会問題を数理モデル化し、その限界も説明せよ」のような問題へ変わっていく可能性があります。
つまり、これから問われるのは、AIをどう使うか。AIの誤りを見抜けるか。AIの出力を統合し、現実に活かせるか、という能力です。これは、まさに実社会そのものです。
現在のエンジニアの世界でも、AIに「電子回路を書かせる」、「コードを書かせる」、「レポートを書かせる」ということは、すでに当たり前になり始めています。
しかし、最終的に価値を出すのは、「AIの出力を評価できる人」です。AIは答えを出します。しかし、その答えが現実の現場で通用するのか、品質・安全性・コスト・信頼性の観点から成立するのかを判断するのは、最終的には人間です。
共同通信社が主要企業111社に行ったアンケートでは、2027年度の新卒採用について、「減らす」と回答した企業が、「増やす」と回答した企業を上回りました。その理由として、「デジタル化による省人化」、「生成AIを活用した業務効率化」、「即戦力人材へのシフト」などが挙げられています。
製造業の現場や、お客様と直接接点を持つ部門では、「自分の仕事はAIには代替されない」と思っている人も多いと思います。それは半分正しいと思います。実際、現場での作業、ものづくり、品質の感覚、お客様との信頼関係など、人間でなければ成立しない仕事は数多くあります。AIは、まだ人間の仕事を突然奪う段階にはありません。しかし、確実に始まっている変化があります。それは、「同じ時間で出せる成果量の差」です。
AIを活用する人は、3~10倍の成果をアウトプットできるので「高付加価値人材」として見られるようになります。一方で、AIを活用しない人は、本人に自覚がないまま、「処理速度の遅い人」と見られるようになっていく。ここが非常に怖いところだと思います。
私自身、比較的AIを活用している方だと思っていました。しかし、振り返ると、自分が得意だと思い込んでいた分野ほど、AIを十分に使っていませんでした。おそらく、30年以上積み重ねてきた実務経験や自己学習に対する自負があり、「誰もが使えるAIの方が優れている」という現実を、認めたくなかったのだと思います。
ところが、AIに自分の得意分野について考えさせてみると、悔しいことに、自分が最初に考えていた内容よりも優れた視点や整理を示されることが多くありました。正直、「専門知識を習得するための時間と努力は無意味だったのではないか」と、失望感を感じたこともありました。
一方で、別の見方をすれば、AIは、自分が不得意な分野に対しても、高いレベルの支援をしてくれる存在でもあります。それに気付いたとき、逆に大きな可能性を感じました。
また、私は、「専門性が深い領域ほど、AI活用の効果は大きい」ことに気づきました。理由は単純です。専門知識を持っている人ほど、AIの出力品質を評価できるからです。逆に、私にとってOS(Windows)など知識の浅い分野ではAIの誤りを見抜けず、問題解決に時間を要した苦い経験があります。つまり、「専門家+AI」は、非常に強い組み合わせです。
AIは、人間の価値を下げる技術ではありません。人間の能力を大きく増幅する技術です。 本格的にAI時代がやってきました。この変化を軽視するのではなく、自分の専門性をさらに磨きながら、AIを使いこなせる人材へ成長してほしいと思います。
そして会社としても、AI時代の変化に適応し、業界の中で必要とされ続ける存在でありたいと思います。