顧客の創造

2023/06/02【社長のメッセージ】

 マネジメントの父と呼ばれたピーター・ドラッカーの著書に1954年発刊された『現代の経営』があります。その一節に「企業は社会の機関であり、企業の目的は顧客の創造である。」と書かれています。
 10年以上前に読んだ時は、心にかすりもしませんでした。しかし、今読み返すと70年前の内容と思えない本質的な内容に、はっとさせられました。
 「顧客の創造」とは、「営業でお客様を増やす」という意味ではありません。

 企業は「顧客満足」を追求していれば良いと思われがちです。しかし、ドラッカーに言わせれば「顧客満足」ではダメなのです。
 なぜならば、社会は絶えず変化しています。たとえば私たちがスマホを使い始めたのは今から約10年前です。その後、私たちの生活は大きく変化しました。さらにChatGPTのようなAIの出現によって、10年後の未来を予想することがとても難しくなりました。
 企業が生き残っていくために、既存市場のお客様にアンケートをして「顧客満足」をしていては井の中の蛙、そして、ゆでガエルになってしまいます。それでは遅すぎるのです。
 ドラッカーは、市場は自然や経済の力で生み出されるのではなく、ビジネスに関わる人達によって創りだされていくものだと言っています。

 「顧客満足」ではダメなもう一つの理由は、お客様自身が欲求を明確にしていないからです。
 自動車がない馬車の時代では、彼らの欲求はより速い馬車であって、エンジンで動く自動車を具体的にイメージして欲求したものではありませんでした。
 企業が自ら新しい市場を創造し、未来を創り出さなければいけないのです。

 当社は今月末に新製品をリリースします。24時間体制で排水処理施設のDO値を記録してグラフ化したり、遠く離れた場所にあるスマホやパソコンにデータを転送したり、異常をメールでお知らせする機能を持つDO計です。
 これは、お客様から具体的な要望をいただいて開発したものではありません。当社はDO計を使う方の仕事の付加価値を上げるためには、何をすべきか真剣に考えてきました。
 世の中に同じような製品はありません。「顧客の創造」が実現できるのではないかと期待しています。

 「顧客の創造」は、企業の経営レベルだけの話ではありません。
 皆さんの後工程はお客様です。たとえば設計部のお客様は製造部です。製品の構造が複雑になり、慣例通りに検査項目を追加しては、製造部としては生産時間が長くなってしまいます。
 検査項目を減らすために、構造や組立工程を改善することで、後工程の製造部は、別の新しい仕事を追加することが可能になります。
 私たちは後工程の仕事の目的と目標を理解することに努め、後工程のニーズを解決してあげることが、「顧客の創造」の第一歩になるのです。