努力するな

2022/10/07【社長のメッセージ】

2011年に芸能界を引退した島田紳助さんが、吉本興業の若手に「努力するな」と言っていました。島田さんの言う努力とは漫才やコントの稽古のことです。
売れていない若手は不安なので漫才の練習を一生懸命にやります。しかし、島田さんは順番が違うと言うのです。「どうやったら売れるのか」という戦略のないままにひたすら漫才の稽古をするのではなく、まずは「笑いの戦略を立てろ」と言っています。
島田さん自身は、まず売れている芸人の漫才を全て録音して、紙に書き起こし、どこでどうボケて、どうツッコみ、どういう種類の笑いを取っているのか、ということを分析していく。すると「落ちのパターンは8割一緒」「つまらないネタを直前に入れると面白いネタが光る」ことが見えてくる。
では、なぜ売れていない若手がそれをやらないのか。漫才の練習をしていると何となく前に進んでいるような気分になって安心するからです。
自分がお笑いタレントとして生きていく場所(芸風)を見つけないことには、職業として続けていくことはできません。自分の持っている間合いとか、話し方とか、見た目とか、お笑い芸人としての自分をプロデュースする、という視点が重要です。
お笑いタレントとして一流になりたければ、「ひたすら漫才の練習をする」という分かりやすい努力ではなく、「お笑い芸人としての戦略を考える」という努力をしなさいと言っているのです。

これは、私たちのようなビジネスパーソンにも参考になると思います。私も朝から夜まで仕事をしていると、心身共に心地よい疲労感を感じ、充実した気分になってしまうことがあります。間違った場所に はしごを掛けて、汗を流しながら一生懸命登っているようなものです。 不毛な努力をして安心するのではなく、最初に正しい位置に はしごを掛けることが最も重要であることを、いつも忘れないようにしたいものです。