2021/05/14【社長のメッセージ】
朝刊に目を通していた時、俳優の香川照之さんの一言で、頭をぶん殴られるような衝撃を受けました。「裕福になったり、何もしなくても仕事が回ったりしても、心の飢えを感じているかどうかが、その人の生き方の本質的な美しさにつながると思うんです。心が飢えた状態を作れるのは人間だけ。」
テレビ番組などで、貧しい国の村の子供達が、ボロボロの教科書と鉛筆を持ちながら目を輝かせながら勉強をしている姿を観ることがあります。私たちは、もはやあのような純粋な学ぶことの喜びから遠いところにあるように思います。悩んでいるからこそ、求める気持ちが強くなります。飢えているからこそ、手にした機会を大事にします。
もっと学びたい、もっと大きな価値を作りたいという欲求は、「心の飢え」が引き起こします。私たちは多くのストレスに押しつぶされそうになりながらも、創造することで人間らしくありたいと願っています。
しかし、人は歳を重ねると変化も緊張感もない状態を求めたくなりますが、危険な考え方だと思います。私たちが生きている環境はゆっくりかもしれませんが、でも確実に変化し続けています。変化に適応するためにも、私たちは学び続ける必要性があります。
「腹の飢え」は、生命維持のために強い欲求のスイッチが入ります。しかし「心の飢え」は生命を脅かすものではないので、私たちの脳は飢えを感じることはありません。自ら強く意識しなければ「心の飢え」を呼び覚ますことができません。「衣食住+職」が取りあえず満たされ、ましてや多量の業務に忙殺される日々を送っていると、つい「心の飢え」に意識を向けることがおっくうになります。
「腹の飢え」が無くなった私たちが、もっと学びたい、もっと大きな価値を作りたいという「心の飢え」を起こし続けることが、個人にとっても当社にとっても本当に大事な課題です。しかし、社員の「心の飢え」を呼び覚ますのは、教育担当者にとって頭を悩ます問題の一つです。
「心の飢え」が大切なのはわかるが、飢餓の無い平穏で多忙な生活の中で、それをどのような方法で起こせばよいのでしょうか。
私はビジネススクールの同級生に近況を聞くことがあります。同級生は年齢層が広く、ビジネスの最前線で活躍しています。仕事を単なる金を稼ぐ手段ではなく、社会貢献の手段として、日本から遠く離れた海外で、大変な苦労をしながら社会に役立つ成果を出しています。
また、『トヨタ チーフエンジニアの仕事』など、壮絶な努力をして一台のクルマを開発していく物語の本を読んだりします。
大きく、強く、高く、深く生きている人の生きざまに刺激を受けることで、今の自分の生き方はぬるくないか?自分の持てる能力を使って世の中に自分の存在意義をぶつけていこう、とそんな心理モードになっていきます。それが「心の飢え」が起こった状態だと思います。
当社は人材が十分ではないかもしれません。ルーチン業務に追われて、夢とか志とか言う前に、日々の激務に耐えるのが目一杯な状況かもしれません。疲れた身体と心を癒やすために、レジャーや買い物で一時的に気分を紛らわすことができるかもしれませんが、心はどこか満たされないままです。何故ならお金で買う癒やしや興奮は、永遠に得られる保証がないからです。
押しつけがましくも伝えたいのは、自ら「心の飢え」を起こすことに正面から向き合うことの大切さを今一度考えてもらいたいのです。そして自己の可能性を最大限に開発し、もっと大きな価値の実現に自分を使うことで、心の奥から湧き上がり続ける幸福を提案させてください。