当事者意識と働き方改革

2018/06/01【社長のメッセージ】

 当事者意識とは、「その仕事やプロジェクトに自分が直接関わっている人間だ。」という意識を持っていることをいいます。
 3年前、私はくじ引きをして小学校のPTA会長に任命されました。
 それまで子供の小学校の活動は、全て妻に任せっきりだったため、資源回収やお祭りなどPTAが主体となって進行させる行事は、どこから手を付けていいのやら困り果てました。
 加えてPAT役員の全員が、くじ引きで任命されたお父さんお母さんです。お互いに面識がないだけでなく、モチベーションなんて存在するわけでなく、やらされ感の強いチームでした。
 何度か顔を合わせて打ち合わせをしたり、メールでやり取りをしていると徐々にチームワークらしきものが作られてきました。

 7人ほどの役員でした。同じように接したつもりですが、反応は3つに分かれました。
 ①仕事が忙しいのでミーティングには毎回は参加できません。しかし、言ってくれればお手伝いしますという人。
 ②頼まれた事をやってくれます。そして忙しい人を見かけると自ら進んで手伝ってくれる人
 ③頼まれた事をやってくれます。さらに全体を把握して、問題が発生しそうなところ探して自ら手と足を動かして対応してくれる人。
 3つのタイプ共に当事者意識はありました。しかし、当事者意識の範囲の広さに差があります。

 欧米の職場では、他人の仕事に口を出したり、勝手に手を出すことはNGだそうです。分業制と専門化が進んでいるからでしょう。
 ハリウッド映画制作の組織では、分業制が徹底的に浸透しているそうです。
 俳優との出演料の交渉だけに特化した代理人
 衣装の色合いを決めるだけに特化したカラリスト
 撮影:カメラマンは「撮影すること」に特化しており、自分の撮った映像が最終的にどのような映像に仕上がるのか分からないで仕事をしている。
 編集:映像を仕上げるのは編集の仕事。編集がその機能専門性を発揮できるように、カメラマンは1つのシーンであっても、ありとあらゆる角度から数多くの映像を撮っておく。
 一部の技術に特化した専門性により、私たちは最先端のエンターテイメントを見ることができます。しかし、専門バカをまとめて、導いていくカリスマ的なリーダーが不可欠で、さらに無駄が多く、多くのメンバーが必要となる。

 日本企業の開発プロジェクト人員数が、欧米企業と比べて1/3~1/4という具合に圧倒的に少ない。これは日本では多能化が進んでいることが関係しています。トヨタがその典型ですが、技術者の専門制の程度が比較的低く、職務範囲が広くなっています。欧米とは正反対です。
 トヨタがスピーディーに製品を開発できる1つの理由は、開発の初期の段階から部品同士のかみ合わせの良さや、つくりやすさを考えながら個々の部品の開発・設計されていることにあります。つまり、できるだけ前工程で部品間の調整の質と量を増やすことを重視しています。

 一方、欧米企業の場合、製品コンセプトの創造やマーケティング、設計の分業が徹底しており、部門間の関与が弱いため、設計のやり直しが何度も発生しています。

 働き方改革とは、労働時間を短くすることだけではありません。人事部が残業禁止することで、会社が持続的に成長し、生き残らせるという経営課題を全て解決するほど日本の労働環境は単純なものではありません。
 より短い労働時間で、より高い成果を上げることが、日本が抱える働き方改革の目標です。
それを解決する手段が、一人一人の職務範囲を広げて、部門の壁を飛び越して、なるべく前倒しで協力し合うこと。つまりは、全社員が当事者意識の範囲を少しずつ広げていくことです。

 もしも、もう一度PTA活動をやるなら、③の人とやりたいと思います。なぜなら、テンションが上がってきてアイデアがどんどん湧き上がってきて、結果的に、より短時間に、より高い成果が出せるからです。
 私たちの職場も同じだと思います。