技術の追求と価値創造

2025/10/10【センサー開発部の仕事】

 映画『国宝』を観たときの、あの静かに熱くなる感じ、その感覚が最近また違う形で、自分の中に戻ってきています。あれから2か月、今度は「MOT(技術経営)」というテーマと本気で向き合い始めたことが、そのきっかけになっています。10回以上のセミナーのうち、まだ序盤の2回を終えたばかりですが、技術と経営、そして社会とのつながりが、これほど深く絡み合っているのかと、ひしひしと実感しています。

 私はこれまで、センサの開発において「性能を極めること」にこだわり続けてきました。「究極の酸素センサを開発する」と何度も皆さんに言っていたと思います。金の表面具合がどうだとか、台座の溝がどう影響するかとか、普通なら、ある程度のところで追及は終わるところを、まだ何かあるんじゃないかと思い、毎日、実験と失敗と発見を繰り返してきました。そしてそれが究極のセンサを作るための修行だと、自分の中の“探究心”をエネルギーとして取り組んできました。
 けれども、MOTを学び始めた今、私は大きな転機に差し掛かっています。「なぜ、そこまでして性能を追求するのか?」――この問いを突き詰めていくと、その先には必ず“価値の創造”がなければならない、という新たな課題が浮かび上がってきました。

 高性能なセンサをつくること、それ自体が目的ではない。そのセンサがどのように社会に役立つのか、誰の課題をどのように解決するのか、なぜ使い手の心が動かされるのか。技術はあくまで手段であり、その先にある「人の喜び」や「未来の変化」こそが、本当のゴールなのだということを、遅ればせながら向き合い始めました。

 いま、私が思い描いているのは、「究極の価値創造型のセンサ開発」です。ユーザーの体験を想像し、「あっ、これなんか違う」と思ってもらえるような瞬間――その“ワクワク”、“ドキドキ”を生み出すような製品開発を目指す。そして、それを技術で実現する。これまでよりもずっと広い視野と感性をもって、社会に役立つセンサをつくっていきたいと考えています。
 同時に、こうした試みには、マーケティングやデザイン、サービスの設計といった、これまで私自身が後回しにしてきた領域にも踏み入れていかなければいけないです。センサ単体の完成度だけでなく、それを表現する本体、使用される状況、そしてその背景にあるストーリーやビジョン――。そこまで含めて「この製品には魂がこもっている」と言ってもらえるような、製品開発を目指していきます。

 会社の未来を考えるとき、単に売れる製品をつくるのではなく、「これは世の中の何かを変えるかもしれない」と思える製品を生み出すことができたら、とんでもなく誇らしい気持ちになれるのではと思います。技術の積み重ねだけでは届かない“人の心に”、どう価値を届けるか。あの「国宝」という映画が教えてくれたのも、単なる「モノ」の完成度ではなく、その奥にある「精神性」や「覚悟」だったと思います。私たちのものづくりにも、そんな“心”が込められていたならば、センサであっても、誰かの現場を支え、日々の判断に安心をもたらす――そんな価値を提供できるのではないかと思います。

 人生は、「生涯修行、臨終定年」。50歳を過ぎた今、あらためて覚悟を持ち、これまで以上にワクワクしながら、そしてちょっとドキドキもしながら、これからの挑戦に向かっていこうと考えています。みなさんも一緒に創造していきましょう。

センサ開発部 kinoshita(秀坊:しゅうぼう)より。