天職は天から降ってくるから

2024/10/04【社長のメッセージ】

 インターンシップ(職業体験)で来社された学生さんの一人から、「今、やりたいことが見つからないのですが、それでいいのでしょうか?」と、素朴な質問を受けました。同じ年頃の子供を持つ私は、胸に痛みを感じました。
 親は子供たちに自分の好きな事や、やりたい事ができる会社に就職してもらいたいと願っています。もし、自分の子供から「やりたいことが見つからない」と言われると、心配になってしまうかもしれません。

 私が学生だった頃、就職する会社を選ぶ基準は、電気回路の設計をさせてくれる会社であれば何処でも良かったのです。自分は口下手ですし、初対面の方にモノを売る度胸もないことを自覚していました。それでも、お客様が困っているのに自分に技術力がないために、開発・設計部門に改良をお願いしたとき、取り合ってくれなかった際に もの凄く悔しい思いをするんだろうなと想像しました。そこで、自分の力でお客様を助けられる製品を開発できる技術を身に付けたいと考えていました。
 そんな意気地なしで中途半端な新入社員だった私は、一刻も早く一人前のエンジニアになりたいと焦り、設計に直接関係しない(と自己判断した)製品の組み立ての手伝いや、改善活動、5S、親睦会には興味がわかず集中できていませんでした。現在の職責を任されて、とんでもない馬鹿野郎だったと顔から火が出るくらい恥ずかしい黒歴史です。
 私は若い人が具体的な目標を持つ必要はないと思っています。むしろ毒になると思っています。(チームの売上目標などは必要です。) 私のように電気回路のエンジニアになるために行動目標を逆算して、経験すべき仕事をえり好みしたらどうなるでしょうか。そもそも電気回路のエンジニアになっていない素人が、自己判断で上司から依頼された仕事に手を抜いていたら、一人前の電気回路のエンジニアになれる可能性を自ら絶ってしまうかもしれません。

 また、最近の生成AIはスマホ以上に私たちの仕事に大きな影響を与えています。AIが身近な存在になり、全くの素人がプログラムやイラスト、作曲までおこなえる時代になりました。10年後に人間が担うべき仕事を想像するのが難しい時代においては、今は希少価値のある専門性の高い技術であっても5年後は誰でもできる希少価値のない技術になってしまっている可能性が高いと言わざるを得ません。

 著名人の中には、天職や目指す目標は突然現れると表現される方がいます。私は社長になることを目標にしたことはありませんでした。自分の意志によらず、突然チャンスが巡って来ます。それは職位だけでなく経験したことの無い魅力的でチャレンジングな仕事の依頼も同様です。
 チャンスは平等です。しかし、チャンスが巡って来た時に、その仕事を受け取れる能力が必要です。その必要な能力とは何か?、人材採用の責任者の意見として、採用したい人材の能力をお話します。世界一の専門技術を持つ人材は高い価値があります。しかし、趣味の域を脱しない専門知識と経験では実務では使い物にならないのでプラス加点にはなりません。しかし、専門知識は70点でも、仲間の意見に耳を傾けて協力し合える柔軟力を持つ人材は、近い将来、仲間と 1+1= 3以上の成果を出してくれると期待します。

 当社は経営方針にも明記してある通り、「いつでも転職できる社員が、それでも転職しない会社」を目指しています。そのための成長の機会を提供しています。
 若い人が目標を持つことは素晴らしいことです。しかし、具体的な目標よりも、抽象的かつ大きな目標を持つ方がいいです。たとえば、仲間から 「あなたと一緒に働くと楽しい。あなたは私の得意分野を最大限に活かしてくれた。そして新たな可能性も見い出してくれた。」と言ってもらえる人になる。などです。  みなさんが天職や目指す目標に巡り会うために、今日から意識して欲しいことは、上司から依頼された仕事は、迷わず、全力で成果を出すことに集中することです。その過程で磨かれる「困難に立ち向かう力」、「仲間を説得して、協力してもらう力」、「論理的思考力」、「相手を感情的にさせず、自分の意見を伝える力」、「一緒に働く仲間に成長の機会を与える力」が養われていきます。これらの力は時代を問わず必要とされる力です。