好きこそものの上手なれ

【社長のメッセージ】2025/03/10

 2026年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした新卒採用の会社説明会が、3月1日に解禁されました。慢性的な人手不足を背景に、今年も学生優位の「売り手市場」が続いています。解禁日前に選考を進める企業も多く、学生の約4割がすでに少なくとも1社の内定を得ているようです。
 就職情報会社マイナビが開催した合同企業説明会に出展した企業の採用担当者によると、学生がまず確認するのは休暇日数や手当、転勤の有無とのこと。それらの条件を満たしていることを確認した後に、事業内容を聞いてくれるそうです。

 全てがマニュアル化されている大企業であれば、一定の理解力と繰り返しの訓練によって戦力になるかもしれません。しかし、当社は少量多品種の製品を生産し、お客様の立場に立って課題解決することを本質的なサービスと位置付けています。よって個人の能力に依存する部分が大きいため、適性の見極めがより重要です。

 採用の判断基準として、教育や訓練によって向上できる能力よりも、後天的に改善が難しい能力に着目して評価しています。また、個人の価値観(大切にしていること)は上司が変えることができないため、お互いのためにしっかりと確認するようにしています。
 個人の能力は、ビジネススキルの土台となります。ビジネススキルを高めることで、職業人としての成長や貢献感、さらには会社の発展に大きく寄与し、全体的にポジティブな影響をもたらします。
 ビジネススキルは、業務遂行能力と対人関係力に分けられます。詳細はここでは割愛しますが、業務遂行能力には情報収集力、文章作成力、論理的思考力、スケジュール管理力などが含まれます。一方、対人関係力にはコミュニケーション力、交渉・調整力、リーダーシップ、ヒアリング力、プレゼンテーション力などが挙げられます。

 求める資質や能力は、会社だけでなく、採用する部署によっても異なります。当社で活躍している人材の共通点を言語化するならば、「面白がる才能」の持ち主です。
 彼らは、本業以外のサブの仕事でも面白みを見つけ、期待される成果に対してプラスアルファを加えています。私自身は、恥ずかしながら面白いと感じることの範囲が狭いため、「面白がる」ことは簡単ではないと実感しています。しかし、面白がる力はビジネススキルの本質ど真ん中です。成果を上げている社員は、自分の仕事を心から面白がっています。だからこそ、のめり込み、普通の人にはできないような努力を投入できるのです。「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、優れた成果が生まれ、それが社会や人の役に立ち、やりがいへとつながります。こうしたサイクルが、仕事における理想的な在り方だと思います。

 成果を出している人と自分を比較し、「自分には忍耐力や努力が足りない」と自己否定をすることもあるかもしれません。しかし、成果を出している人は、自分が努力しているという意識すらないことが多いのです。誤解のないように付け加えると、彼らも常に好きな仕事ばかりをしているわけではありません。時には苦痛を感じる努力をしています。

 そこで、「面白い」と思えることが少ない人へのアクションプランを提案します。それは、興味を持ちたい仕事に関する本を5冊読むことです。本を読む習慣がない人にとってはハードルが高く感じるかもしれませんが、実証済みの方法であり、効果は保証します。
 ビジネス書は10万部売れれば大ヒットとされます。例えば、全てのビジネスパーソンの必読書『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)は国内で250万部売れていますが、日本の労働人口約7,000万人に対し、読んでいる人は28人に1人です。また少し意識の高い系ビジネスパーソンが読んでいる『イシューからはじめよ』(安宅和人 著)は60万部で、100人に1人しか読んでいません。
 もし、関心を持ちたい仕事に関する本を5冊読めば、上位0.1%の知識が身に付くだけでなく、その仕事の奥深さを知り、興味を持つようになるでしょう。300ページの本を5冊、1ページをゆっくりと1分かけて読んでも25時間。1万円の投資で上位0.1%の知識を持つ人材になれます。ビジネス英会話の習得には、1,000~3,000時間かかると言われていますので、読書ほどコスパとタイパの良い自己投資はないと思います。

 最後に、漫画『宇宙兄弟』の主人公・ムッタの言葉を思い出します。「自分が楽しんだ結果、喜ぶ人がいる。これ以上のことがあるか? これが私の天職だ。」 楽しいことばかりを仕事にできる人は極めて希ですが、楽しめる仕事を持つことは、とても幸せなことだと思います。