怒りは再生可能エネルギー

2024/06/28【社長のメッセージ】

 当社は年間12時間の外部講習を受講する事を義務付けています。大企業の平均11時間よりも多いです。目的は、経営方針で明言しているように「いつでも転職できる社員が、それでも転職しない会社」になるために、社員の成長の機会を提供したいと考えているからです。

 リーダー層に特に人気のある外部講習はアンガーマネジメントです。アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれたとされている怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。怒りを感じたときは、6秒深呼吸する。その場を離れる。「○○すべき」という価値観を捨てる。怒りを記録して、自分はなぜ怒りの感情を持ったのかを冷静に分析する。などが主なトレーニング内容になっています。つまり、発生した怒りを速やかに静めるか、怒りの発生を減らすことが主題になっています。

 私はリーダーが怒ることに否定的ではありません。ただし、いつもイライラしていたり、暴言を吐いて仲間を不愉快にしたりするのは論外です。怒りとは執着の結果です。つまり、「もっとこうあるべきだ」、「もっと高いレベルで出来るはずだ」、「もっと良いやり方があるばずだ」という強烈な向上心があるからこそ怒りが湧き上がってくるのだと思います。
 ですから、怒っている上司を見ると、私は安心できます。逆に自分に任された仕事で怒りの感情が湧かないようであれば、もっと良い成果を出そうとする執着が無くなっている状態です。リーダーとしては失格です。部下があまり良くない仕事をしていても、仕方がないと諦めているリーダーを見ていると心配になります。

 間違って欲しくないのは、怒っていれば良いということではありません。人を動かすのは感情です。怒りも感情の1つです。怒りの感情を仕事の推進力にするのです。

 私が個人の評価制度を作ったのは、20年くらい前です。当時は作業マニュアルがしっかり整備されておらず、最初に先輩から口伝えで作業方法を教えてもらいますが、その後は個人がやりやすい方法でルーチン業務をこなしていました。当然ミスは多かったですし、業務改善はほとんど実施されず、作業の効率は悪いままでした。
 私はもっと効率的に仕事をして、新製品や新サービスを作っていきたいと思っていましたが、それが叶わず いつもイライラしていました。部下に怒りをぶつけていましたが、社内の雰囲気が悪くなるばかりで、何も変わりませんでした。
 怒りを部下にぶつけるのではなく、個人の評価基準を具体的にした評価制度を作り、その評価結果で昇給、昇格を決めるようにしました。すぐには効果が出ませんでしたが、評価基準の見直しを重ねることで、部下に怒りをぶつけなくても、私がイメージしている仕事の進め方をしてもらえるようになりました。

 怒りは人を動かす強いエネルギーです。大切なのはその怒りのパワーを仲間や部下に向けるのではなく、自分自身に向けることです。「自分がもっと良くできる方法はないか」と怒りの向かう先を変えることです。

 部下のミスが多いなら、部下に怒りをぶつけるのではなく、作業標準書の表現方法を見直す。部下が自分の言うことを正しく理解してもらえないなら、部下に怒りをぶつけるのではなく、要点を紙に書いて渡す。など、怒りのパワーを自分の原動力に使うのです。
 怒りを静めるトレーニングは多くの場合有効だと思いますが、純粋な向上心から生まれた怒りのエネルギーを自分の仕事の原動力に再利用していきましょう。