育て方改革

2024/03/01【社長のメッセージ」

 働き方改革関連法により、中小企業に対しても残業は360時間/年、クレーム対応などの臨時的な特別な事情がある場合でも45時間/月を超えるのは6ヶ月を限度とする、となりました。
 社員にとっては、労働時間が短くなって、プライベートの時間が増えたことで働きやすい環境になります。しかし、国内の20代後半の若手の離職経験率は51%となっています。優秀な若者たちは、「居心地は良いが、このままだと成長できず社外で通用しない人間になってしまうのではないか」と焦って転職を決断しているようです。

 大企業は一足早く2019年から法改正が適用されましたが、管理職の仕事は一層増えて部下へのOJTの時間が減ったようです。また、社員の外部講習の時間も19時間から12時間に減っています。
 社員が職場で生き生きと働くためには、心理的安定性に加えて、その職場で自分がどんな社会人になっていけるのかと予感させる「キャリア安全性」が必要です。
 心理的安全性とは、「チームの他のメンバーが自らの発言を拒絶したり罰したりしない、と確信できる状態」です。キャリア安全性とは、「その職場で働き続けた場合に、自分がキャリアの選択権を保持し続けられるという認識」です。 ひとつの分野で優位性を持てる専門性を習得するためには一定の時間と、一定の努力量が必要です。社会人が英語を話せるようになるまでにかかる時間は 3,000時間と言われているのと同じようなイメージです。

 働き方改革以前の職場では、深夜残業や土日出勤、高いノルマや厳しい叱責で若者に大量の仕事を課すことが可能でした。これを我慢して、何年かこなしていれば、自然に専門性を習得することができました。単身、外国へ行けば英語が自然に身に付くのと同じです。
 ところが、働き方改革後は労働時間が短くなったので、上司が「自分が育てられたやり方で育てる」ことができません。若者育成の難易度は跳ね上がったといえます。自分たちが育ったやり方と全く違う方法で若手を育てなくてはなりません。
 将来、目指したいキャリアが明確になっている若者たちには、ある種の弱点があります。それは、現在地と目標との間にある本人が認識している機会しか、本人が成長の機会として認識できないことです。目標が明確であればあるほど、その延長線上にない機会はムダだと切り捨てられる。目標があるならば、最短距離をいきたいものだからです。
 上司は若者の合理性を超えた機会の提供を、若者の納得感を調整しながらいかに与えていくのかが、今後の大きな課題になります。
 加えて、経験をどんどん積んでいきたい若者にとっては、上司からの機会の提供は、入り口から無意味なものに感じられてしまうため、目に見える近いところにゴールテープを張った短距離走が望ましいです。でないと、若者の職業人生プランには組み込まれにくいのです。
 働き方改革前に先輩からゴリゴリと教育された現在のリーダーたちは、若手教育にそこまでしなければならないのか?と思うかもしれません。
 「働き方改革」と「育て方改革」は、車の両輪です。質的に負荷の高い仕事を、いかに長時間労働に頼らず、また上司・先輩の厳しい指導に起因する負荷を加えず育てるかが、若手育成の肝になります。
 私自身が現在のリーダーをゴリゴリとやってきた張本人ですので、現在の先輩社員には大変心苦しいのですが、ご苦労を掛けしますが若手育成に協力をお願いします。

 当社も時代に沿って、労働と自己研さんの時間を意識的にきちんと分けていきましょう。社外から高く評価され、いつでも転職できるスキルを持っているが、残りたいと思える会社にしていきたいと考えています。
 そのためには、一日の労働の終わりの時間を決めて、守るようにしていきましょう。プライベート時間でしっかりと心と身体を休めて、自己研さんにも励んでいただきたいと思います。