最近の若い者

2024/01/12【社長のメッセージ】

 「最近の若い者は・・・」と、年配者が若者を批判することがあります。これは最近のことだけでなく、古代ギリシャの哲学者プラトンも「最近の若い者は、目上の人を尊敬せず、親に反抗し・・・・道徳のかけらもない」と書き残しています。
 1970年代の日本でも若者に対して、無気力、無関心、無責任の「三無主義」と言われるようになりました。
 現在の50代、60代である私の年代は、「新人類」という言葉が流行語となり、「今時の若者はどこか遠い星からやってきた宇宙人のようだ」と、ゆやされました。
 いつの時代も年配者から見て若者は、「自分に甘く、他人に厳しい」「努力せず成果が欲しい」「すぐにイラつき、キレる」「無気力、うつになりやすい」と目に映ります。心理学者の速水敏彦氏によると、これらの現象は、若者が他者を見下したり軽視することで、無意識に自分の価値や能力に対する評価を保持したり高めようとすることで自分は有能だ、と感じていたいと分析しています。自分が傷つくことから守るための防衛本能です。
 全てをわかったような口ぶりの若者の多くも、仕事や恋愛、結婚のこと。20年後、30年後のこと。このままでいいのか、自信がない。でも、何をしたらいいのかわからない。そんな漠然とした不安を抱えています。

 最近は、「多様性を受け入れる」というフレーズをよく耳にします。会社組織における多様性とは、性別や年齢、国籍、文化、価値観など、多様なバックグランドを持つ人材を受け入れ、その能力を幅広く活用することで、新たな価値を創造するという成長のための戦略の一つです。
 いつの時代も年配者にとって、若者は宇宙人です。多様性を受け入れるために、経営方針で明確にされているチームが必ず共有すべき価値観以外の個人レベルの価値観のズレは、むしろ育てるべき対象です。当社はどうすれば、多様な価値観を受け入れ、彼らの能力を十分に引き出すことができるのか?という難しい課題と向き合うことを真剣に考えなければならない時です。
 若者に対する思いはいつの時代も同じですが、近年の大きな変化は学校教育の転換期が挙げられます。教師や先輩との上下関係が絶対的で、常に目上の人に対して気配りを持ち、自分で先に気付いて行動をしなければ怒られることに委縮しながら学校を過ごしていた昔とは違い、今の若者たちは文科省が主導した「ゆとり教育」のおかげで、心にゆとりのある、分け隔てなく相手を思いやれる優しい人が多い世代です。

 当社が若者の価値観の多様性を受け入れるためには、大きな意識改革が必要です。私たち先輩や上司が、後輩よりも知識や経験、成果を出せているのは、先輩の厳しいシゴキに耐えたことが大きいと信じています。長年のシゴキに必死に耐えたことに意味を持たせたいと考えるのは人の心理です。
 しかし、若者は先輩の苦労を頭では理解出来ても、「シゴキに耐えることで成長できるから頑張れ」と言われたら、若者は逃げ出してしまうでしょう。若者と我々40代以降の者の生い立ちは大きく異なります。まずは、「自分は過去に受けた教育にとらわれている」と自覚することが必要だと思います。
 たとえば、「言われた通りにやりなさい。」という、まるで大人と子供のような関係性は世界ではあまりないそうです。後輩に何度教えても同じミスをするようであれば、教え方に改善の余地があったのではないかと内省し、教え方を共に研究する仲間だと前向きに考えたいと思います。
 2つ目は、積極的なコミュニケーションです。
若者に興味を持ち、彼らが大切にしていることの傾聴です。(傾聴は当社の多くの先輩が出来るようになったと思います。) その後で、自分が大切に思っていることを繰り返し若者に伝えることが必要です(同調を強制してはいけません)。一度だけではなく、何度も価値観のキャッチボールをすることで、互いに信頼とリスペクトが育まれていきます。
 安心して率直な質問が出来たり、心の内を開示することができる人間関係は、生産性の向上だけでなく、人生において何ものにも変えられない宝です。