労使関係の軸

2023/11/10【社長のメッセージ】

 先日、第2回目のパートリーダー会議がおこなわれました。
 パート社員を代表する4名のパートリーダーに集まってもらい、会社側から社内行事の予定や その他連絡事項の共有。パートリーダーから各委員の活動実績や、職場で困っている事の報告をしてもらいました。

 職場で困っている事の報告を聞いていて、2019年のトヨタ自動車の労使交渉を思い出しました。
 誤解なきよう書き添えます。パートリーダー会議では、従業員として当たり前以上の要望があったわけではありません。

 会社と労働者という関係では、会社の方が立場的に強いというのが一般的です。そのため、ひとりの社員が、雇用条件などについて会社に直談判するには、相当な勇気と覚悟が必要です。しかし、労働組合であれば、働く人の代表という立場で、雇う側と対等に話し合える「集団的労使関係」を築くことができるので、働く人の意見を、職場に反映させることが可能になります。会社側も職場で起きている問題を早く把握することで、社員の意欲向上や仕事の効率アップに繋げられるため、私は有効な仕組みだと考えています。しかし当社は労働組合がありませんので、社員が本音で話し合える雰囲気を作り、維持することが重要だと考えています。

 トヨタ自動車は2019年2月から始まった労使交渉で決着が付かず、9ヶ月間の延長戦を実施するという異例の事態になりました。

 自動車業界が、100年に1度と言われる大変革期にある中、豊田章男社長(当時)が、「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」と危機感をあらわにしました。トヨタが頭を悩ませているのは、「変わろうとしない」社員の存在でした。これまでトヨタは、年功序列や終身雇用といった「日本型雇用」の象徴的存在と見られていたが、その同社ですら、雇用の在り方を大きく見直そうとしていました。
 5回目の労使専門委員会で、トヨタは評価制度見直しの具体案を組合に提示しました。曖昧だった評価基準を、トヨタの価値観の理解・実践による「人間力」と、能力をいかに発揮したかという「実行力」に照らし、昇格と昇給の判断基準にすることになりました。
 豊田章男社長は現場をアポイントなしで訪れ、現場の実態を確認しました。そのうえで、トヨタの原点である「カイゼン」に改めて取り組みました。5月には60%だった社員の参加率は9月には90%まで上昇。全員が変われるという期待が持てたことから、労働組合側が要求する賃金と賞与額を全て受け入れました。

 当社は、既存社員の高齢化と、高い資質を持った人材の採用に苦心しています。結果として、専門スキルを持つ社員の負荷が極めて高くなっています。仕事の分散が急務です。指示待ちではなく、パート社員も含め全社員が自ら主体的に助け合い、ひとり残らず全社員が健康で気持ちよく仕事ができるようにしていきたいと考えています。

 会社と社員は、車の両輪です。お互いにどちらも除くことのできない密接な関係です。「会社は社員の幸せを願い、社員は会社の発展を願う。」 この労使関係の軸をぶらさず、本気で、本音で、真剣に話し合う。そんな会社にしていきたいと考えています。