勝ちパターンをアップデート

2023/07/14【社長のメッセージ】

先週、蒲郡クラシックホテルで創立50周年式典をおこないました。
会長より創業当時の想いを語ってもらいました。若い世代の社員達は、50年前の苦労を知り胸が熱くなったと教えてくれました。また、各部のリーダー達から直近10年間の成長事例を聞いて、次回10年後の式典では、自分が発表する側に立ちたいと話してくれた社員がいました。とても頼もしいです。

当社は先人達の努力の積み重ねによって存在しています。これは間違いのない事実です。お客様と一定の信頼関係が築かれているため、私達は安定した収入が得られて生活を営むことができています。また、私達自身が習得した知識や経験を活かして社会や仲間に貢献できている自負もあります。
先人達の勝ちパターンを参考にすることは、とても有効だと思います。しかし、盲目的に踏襲することは反対です。
失敗した対象を見ずに、成功した(生存した)対象のみを基準に判断することを、認知心理学用語で生存者バイアス(偏り)といいます。
生存者バイアスの例として、実績のあるスポーツのコーチが、たびたび体罰の有用性について主張することがあります。彼らの主張は、「実績のある選手はみな、体罰を受けて成長した」と言います。しかしこの主張は、体罰に耐えて残った選手しか目を向けていません。本来活躍できる才能を持った選手が、体罰によって芽を摘み取られてしまった事実を無視しています。

会社組織でも生存者バイアスは存在します。会社は生き残った社員だけがリーダーになっています。自信のあるリーダーほど、生存者バイアスに無自覚の傾向があります。私もその一人だと自覚しています。
自分自身の成功経験に基づき、若い社員の発言機会や決断経験をへし折ってしまうことがあります。生存者バイアスによって、「自分もこう育って成長したから、あなたにも同じように教育する」のように、自己の教育方法を正当化してしまう危険性があります。
過去の成功体験に基づく勝ちパターンの内、何を残し、何をアップデートするかを判断することは、とても難しいことです。私は社風も時代と共に見直されるべきと考えていますので、不変の勝ちパターンを求める事は自己矛盾を起こしています。ならば過去の勝ちパターンを盲信するのでなく、現在にも視点を向けるべきだと考えます。
たとえば、若い社員の達成事例に対して、達成の要因を共に考え言語化し、組織で共有することです。このコミュニケーションは、若い社員の自己効力感を育む効果もあります。
自己効力感は自己肯定感とは異なります。自己肯定感とは、特に根拠が無くても自分を肯定する感覚です。(日本人は自己肯定感が、世界的にとても低いと言われています)一方、自己効力感とは達成経験をもとにして自分を信頼している状態です。
難しい仕事に対する成功体験は無くても、「過去に出来なかった仕事が、出来るようになった」のように他者との比較ではなく、過去の自分との比較であれば誰にでも達成経験はあるはずです。リーダーは他の部員と比較してレッテルを貼るのではなく、1年前の彼と比べて成長を認める方が、お互いにとって幸せになれると思います。 自己効力感が高いとチャレンジする意欲が増し、失敗を次に活かせるなどの効用があります。私達は若い次の世代の社員と共に、勝ちパターンをアップデートしながら、この先10年後、20年後も成長し、お客様に必要とされ続ける会社になっていきましょう。