天職 ~その1~

2021/03/05【社長のメッセージ】

 多くの人が天職に出会いたいと願っていると思います。私がイメージする天職には2つの要件があります。今月は1つ目の要件についてお話しします。
 天職は英語でcalling(呼ぶこと)というそうです。神様のお告げによってその職に呼ばれ、導かれたということなのでしょうか。私は、漫画『宇宙兄弟』の宇宙飛行士を目指す主人公 ムッタの言葉を思い出します。「自分が楽しんだ結果、喜ぶ人がいる。これ以上のことがあるか? これが私の天職だ。」

 私たちが生活するとき、そこには必ず人と人のつながりと助け合いがあります。自分ではできないこと、例えば技術が無い、労力や時間を割けない事を、他の人がする「仕事」に助けてもらっています。
 同様に、私たちが日々おこなっている仕事も多くの人を助けています。

 私は学生の頃、アルバイトを5日で辞めてしまったことがあります。そのアルバイト先は社員数20名くらいの鉄工所で、私に与えられた仕事は、小型エンジンの部品をフライス盤に固定し、スタートボタンを押すだけの仕事でした。蒸し暑さと大きな切削音の中で、なかなか進まない時計を見ながら作業をしていました。暑さと音、切削油の匂いで食欲も無く、支給される弁当もほとんど喉を通りませんでした。
 4日目の午後、いつものように繰り返しの作業をしていたとき、部品の固定が甘く、切削中に部品が外れ、大きな音を立てて高価なフライス盤の刃物が飛び散りました。慌てて飛んで来てくれた社員が後始末をしてくれ、私は別の作業を指示されました。多くの方々に迷惑をかけてしまい、気まずさと後ろめたい気持ちから辞めさせてもらうことにしました。
 当社に入社して、任せてもらった仕事は、建設省(現在の国交省)から委託されたメーカーのOEM(他社ブランド製品)の設計と製作でした。 不具合対応で現地に行ったとき、自分が手掛けた製品が、ベテランの技術者に使っていただいているのを目の当たりにしました。それまでは、自分の仕事の「計測器をつくる」という表面的な部分しか見えていませんでした。しかし自然環境保全と社会経済を高い次元で両立を目指す公共事業の推進可否を、国民が最善の判断をするための計測データを取るための計測器をつくる仕事を担っていることをあらためて知りました。自分がやっている仕事に大きな責任とやりがいを感じました。そのとき視界がパッと広がって、見える景色が一変しました。
 この経験以降、私は自分の仕事にのめり込んでいきました。もっとできることを増やしたい。もっと仕事を任せてもらいたいと思う気持ちが大きくなりました。
 今になって思えば、5日で辞めたアルバイトは、そういう視点を自分が持っていなかったからかもしれません。どんな仕事でも、社会の中で欠かせない素晴らしい役割を担っているはずで、それに気づいているか、気づいていないかが、仕事のやりがいを感じている人と、そうでない人の差かもしれません。私は今の仕事が好きだし、やりがいを感じているから幸せです。

 先日、パート社員さん向けに、営業部の竹内さん、石川さん、内藤雄介さんが、3回に渡って当社の製品の使用目的や市場について説明をしてくれました。アンケートの結果、参加者の全員が、「当社が社会に貢献している具体的な内容を知ることできて、自らの仕事に誇りを持てた。」または、「今まで知らなかった製品の魅力や貢献内容を知り、仕事への活力になった。」と答えてくれています。また65%の方が「家族や知人に自らの仕事内容や製品の貢献内容等について話をした。」と答えてくれました。また、「他の製品も知りたい」とコメントしてくれました。とても嬉しいです。

 みなさんが楽しんで、やりがいを持って仕事ができる会社にしていきたいと思っています。

(その2 に続きます)