とどめを刺す

2017/07/07【社長のメッセージ】

 松下幸之助さんが残した講話はたくさんあります。時代を超えて正しい道を示していると感心させられます。今日は現在の当社にとって大事な教えとなる講話「とどめを刺す」を紹介します。

 昭和20年後半、松下電器(現 パナソニック)は、生産販売を始めたばかりの電気冷蔵庫を広告するために、当時、日本一と言われていた百貨店の電化製品売り場に展示させてもらうために懸命に交渉を重ねてきた。当時、冷蔵庫売り場は海外製で占められていた。粘り強い交渉の甲斐あって、電化製品売り場に置かせてもらえることになった。松下電器の営業部マンが喜びに沸き立っていたところに、たまたま上京してきた幸之助がそこに現れた。
 責任者から改めて報告をもらった幸之助は、「それはよかったなぁ。ご苦労さん。」
 「しかし、ものごとはね、とどめをさすこと、これが絶対に肝心なことやで。君たちはとどめを刺したかね。刺しとらん。実は今百貨店の売り場を見てきたが、あれで満足しとったらあかん。人目に付く場所に展示して、販売促進になるように飾り付けするなどしなければ、目的を達成したことにならん。今のところはまだ肝心のとどめが刺されておらん。」
 と言われたそうです。せっかくの努力も最後の残り1%のとどめが刺せていなかったら、それは始めから無きに等しいと仰っています。

 昔の武士には「とどめを刺す」という厳しい心得と作法があったそうです。
 武士と言えば、「武士の情け」という言葉が先にイメージされる方もいるかもしれません。敵であろうと「家族への伝言など最期の願いを聞き届ける」「死後丁重にとむらう」といった武士としての温情、情けです。
 しかし、武士の本文は、戦において仕える主君のため敵を斬り、命を絶つ非情さや作法が重んじられていました。 だから武士達は、あと一息というところをいい加減にして、心をゆるめて、とどめを刺すのを怠って、その作法をのっとらないことを大変な恥としました。武士にとって恥をさらすことは、死ぬこと以上に嫌いました。
 最後の最後まできちんと徹底して処理をすること。それが昔の武士たちが一番大事な心掛けとされてきたそうです。その心がけは小さな頃から教育され、箸の上げ下げ、挨拶の仕方まで厳しく躾けられました。
 私達は武士ではありませんが、仕事に対する心構えは見習うところがあると思います。当社は創業から45年経ちました。創業の年に10万社ほどの企業が産声を上げましたが、現在残っている会社はおそらく10社程度だと思われます。40歳を迎える企業の生存率は0.01%です。当社が生き残っていることは奇跡に近いのです。さらに当社は現在も売上を伸ばしています。他社のように売上が毎年下がり、給料カット、人員削減されている職場ではありません。生活をしていく上では危機感の少ない職場だと思います。反面、緊張感の少ない職場であり、何でもないような事でつまずいて大けがする可能性が高まっていると思います。
 昔の武士がとどめを刺さないことを深く恥じたように、私達は最後のとどめを刺さない仕事を大いに恥とする厳しい心がけと緊張感を持って仕事に臨みましょう。