「多様性の本質」

2023/04/07【社長のメッセージ】

 当社は、海外進出を一つの経営課題として取り上げています。目的は経営方針にも明記してありますが、総売上高の維持だけではなく、社員の成長の機会を作ることです。

 海外進出というと、ダイバシティー(以下、多様性)が重要だと言われています。ビジネスにおける多様性とは、性別、人種、民族、宗教、国籍、年齢、性格、学歴、価値観などの違いを受け入れ、新しい価値を創造することを意味します。

 海外の販売店と協力して商売をしていく上で、多様性は避けて通れない課題です。日本は島国で単一民族の歴史が長いため、欧米と比べると多様性は、積極的に学ぶ機会を作らなければ育たない思想です。

 日本では多様性を受け入れること自体が、多様性の目的になっているように感じます。しかし、それでは意見はまとまらず、好き勝手に仕事をしても成果は上がりません。組織で高い成果を上げるには、多様な人々や活動を一つの目的や成果に向けて、制限や統合をする必要があります。多様性のマネジメントとは、全ての多様性を盲目的に受け入れることでなく、その後の統合に視点を置くべきです。

 経営は他社との違いを作って、差別化することで付加価値を作っていく活動です。多様性とは、全てを許容する事ではなく、何を制限や統合して、何を許容するのかを決める事と言えます。

 当社は、「買っていただいてからもお客様」という標語があります。これは、製品を買ってもらうまでは、お客様扱いしているのに、アフターサービスの段階では雑な対応をする企業が多い中、当社はアフターサービスに力を入れ、お客様に満足していただく事を全社員が共有しています。

 もう一つ、「発生した問題の原因は、自分にある。」これは、一見、自分には関係ないと思うことでも、全ては自分に原因があるという考え方です。お客様の現場で発生した不具合に対して、お客様を疑うのではなく、自分を疑い誠意を持って最後まで対応する姿勢です。訴訟社会の外国人には、受け入れにくい思想だと思います。これも当社で大切にしている思想です。

 当社はこれらの思想が商売の根底にあります。その事例として、ご購入後、お客様が困らないように、事前に使用目的や用途などを詳細に確認してから見積書を発行しています。その他、スピーディーに不具合を解決するために、営業スタッフには問題解決の事例集を完璧に習得してもらっています。これらの結果、アンケートによると、当社のアフターサービスは、他社と比べて高い満足度をいただいています。しかし、海外の販売店に、これらの活動を真似してもらうことは、負担を感じるようです。

 しかし、この部分は当社の差別化の根幹であり、譲れない部分です。海外の販売店には丁寧に説明を続け、ご理解いただける販売店のみ、お付き合いをしていきたいと考えています。

 多様性は、輸出だけの課題ではありません。当社の平均年齢は44歳です。20代の青年たちと価値観に多少の違いがあるのは自然なことです。多様性を認め、新しい価値を創造するという意味では、年齢差による多様性の問題は、うやむやにせず前向きに議論すべき課題の一つです。

 「失敗があるからチャレンジである。だから失敗を恐れずチャレンジし続けよう。」という社風を、効率を重視する青年にも受け入れてもらう、これは社内で統合すべき価値観です。しかし、昔ながらの飲み会は、別の方法でも代替できますから、我々先輩は強要せず、青年の考えを容認すべき事だと思います。

 以上は一例ですが、多様性の本質は、我が社が、どんな理念や戦略でお客様にサービスを提供しようとしているのかを、改めて考えることです。部下育成に悩む先輩社員の参考になれば幸いです。