突破口は現場にあり

2017/12/01【社長のメッセージ】

 今年もあと1ヶ月となりました。現在の私の心境をお話しします。

 当社は今年で創業から45年になりました。現在、財務基盤はとても安定している会社だと思います。 企業の寿命は30年と言われています。なぜ企業の寿命は30年なのか、京セラの創業者 稲森和夫さんの言葉を借りると、創業から30年までは、経営者だけでなく社員もみんな力を合わせて、「傾かせないようにしよう。さらにもっと立派な会社にしていこう。」と全社員が危機感と緊張感を持っているのだと。
 私たちも足下が悪いと、転ばないように細心の注意を払っているときは転ばない。しかし足下がしっかりと舗装されていると、つい油断をしてしまい何でもないところで転んでしまうことがあります。
 私自身、会社が潰れる瞬間を経験していない。だから過剰に心配し過ぎだと思うかもしれないが、「七転び八起き」のように、七回転んで八回目に起き上がれば良いというようなのんきな事ではいけないと考えています。1度も転ばないためには、会社の玄関をくぐった瞬間から緊張感と危機感を持つことが大切だと考えています。それを忘れないように、朝の挨拶のしかた、朝礼に望む気持ちを丁寧に、力一杯、元気よくやるという行動を起こすことで、心が後から付いてくると考えています。でも業務中は和気あいあい、自由闊達に意見を言い合える明るい職場、この緩急が活き活きとした職場に繋がると信じています。
 45年間、酸素計の技術で食べてくることができました。だから、これからも酸素計の技術を守っていけばこれからも大丈夫だ、という考え方はとても危ないと思います。

 先日、豊川市の金属プレス会社を見学させてもらう機会がありました。元々は、100%自動車部品を生産している町工場だったそうです。親会社から海外に工場を建てるから一緒に付いてきて欲しいと頼まれました。それを受け入れれば、社内のエース級の社員を出さなければならない。考えたあげく、その依頼を断り、自社製品で売上を上げることを選んだそうです。
 自ら退路を断ち、これまで積み重ねてきた金属プレスの技術を売りに、住宅メーカー(○○ハウス)の購買部に行ったところ、門前払いになったそうです。

 そこで弁当を持参し、○○ハウスの建築現場に行き、大工の仕事を1週間見続けたそうです。大工が、上を向いて両手を使ってボルトを固定するのがとても辛いと言っている聞き、早速、ワンタッチで固定できる金具の試作品を作り、大工に使ってもらったところ、とても良いとお墨付きをもらったそうです。その試作品を持って、再び○○ハウスの購買部に行ったところ、大変関心を持ってくれ早速大口の注文をもらうことができたそうです。
 自動車部品の製造は、親会社から図面が出てきて、過剰と思える品質に対して手間を掛けて生産しても価格が安く、毎年値引き交渉されてきつかったそうです。
 しかし、住宅用の部品は、住宅メーカーから部品の図面が出てくることはほとんど無く、自社で図面を書く。そのため材料に無駄が無い図面が書ける。特許も出せるため、気に入ってくれれば値引き交渉無しで注文が入ってくる。これこそ自社製品の強みです。
その金属プレス会社の設計者は、「突破口の情報は現場にしかない。」そして、「現場の作業者が認めてくれたものは売れる。」と言っていました。
 当社では、現在、営業部と設計部がペアーになって、お客様の現場に行って潜在的なニーズを取りに行っています。いい情報がたくさん取れています。社内で勤務されているみなさんの場合、職場が現場です。現場を知り尽くした皆さんが、自分自身が作業しやすいように改善してください。今月から提案件数は何枚出してくれても1枚500円で受け付けさせてもらいます。がんばっていっぱい出してください。

 もう一つ、心に残った金属プレス会社の社長の言葉に、
 「リスクは避けるものではなく、積極的にとりに行くものだ。」
 成長とは、現在の自分の限界を越えることです。現時点の知識や経験を越えたところを目標にすることで成長があるのであって、やったことがないという理由で、自分でブレーキをかけたり、後輩に対して「工程を変えたら予期せぬ問題が出るかもしれないから、余計なことを考えるな。」これでは個人も会社も成長できません。
 会社は建物ではありません。人で成り立っています。つまり個人の成長が会社の成長です。
 最近、考えることは、私自身の進退です。引き際が大切だと思っています。口では成長が大事と言っていながらも、自分の知識と経験を越える仕事に消極的になったら、後輩にバトンを譲る時だと考えています。
 それまでは、「ぎりぎりまでリスクをとって成長することが大事」の精神でいきます。一緒にかき分け前進していきましょう。