個人と組織のアップデート

2020/08/07【社長のメッセージ】

 皆さんも思考が堂々巡りになった時、「憧れのあの人だったらどうするだろう?」と考えることがあるのではないでしょうか。私も、「稲盛和夫さんだったら・・・、大前研一さんだったら・・・、安宅和人さんだったら・・・、松岡修造さんだったら・・・」とやっています。これは有効な方法だと思います。

 ところが、『50代 後悔しない働き方』という本を読んで、落とし穴があることに気付きました。
 60歳以上の1万人を対象に、「50代で後悔していること」をインタビューしたところ、1位は「定年後の人生設計をしておくべきだった。」だそうです。仕事に忙殺されて、それどころではなかった人も多いでしょうし、なんとなく漫然と過ごしているうちに、いつの間にか60歳に、という人もいます。意外に多かったのは、「定年になったら、まずはゆっくり充電しながら、その先のことを考えよう。」と思っていたタイプです。しかしその充電中に、「現役時代、せめて50歳から、定年後の『人生設計』をしておくべきだった。」と後悔しているらしいのです。

 特に参考になったのは、6位の「思考停止の生活習慣病になっていた。」です。「会社はこう考えているだろうから、私としては~」、「上司はこう思うだろうから、私は~」となってしまうことです。「社長はどう思うか」、「係長がどう判断するか」と斟酌し、慮る日々が何十年も続いてしまうと、思考力が退化したり、自由な発想ができなくなったりします。

 先ほどの「憧れのあの人だったらどうするだろう?」と考えるのと、似て非なるものです。
 「憧れのあの人だったらどうするだろう?」と考えることで、自分に良い影響を与えてくれるのは、自分の意識やセルフイメージが上がった状態で物事を見られるようになり、目の前の現実(問題)に対して、前向きで新しい解釈が生まれているためです。

 一方、「社長や係長はこう思うだろうから、私は~」と上司を斟酌し過ぎることで、自分の意志を排除してしまうことがあります。人が集まる場所では、空気を読むことで無益ないさかいを減らすことができます。しかし会社で空気を読み過ぎると、新しい付加価値を生み出すことができません。

 年長者の経験や知識は組織の財産です。しかし若い人の感性や新しいことへの意欲を、年長者がそっとサポートできる組織が理想的な姿だと思います。