変異を起こす

2021/12/03【社長のメッセージ】

 みなさんもダーウィンの進化論を聞いたことがあると思います。「この世に生き残る生き物は、力の強いものでも、頭のいいものでもない。それは変化に対応できる生き物だ。」という理論です。
 キリンの首が長くなったのは、祖先が高いところにある葉を食べるために首を伸ばした。努力の甲斐あって少しだけ首が長くなった。その形姿が子孫に遺伝し、その子孫がもっと高いところの葉を食べようと努力を重ねて何百世代も続けた結果、現在の首の長いキリンになったというものです。

 これは新入社員研修でも、しばしば引用されます。お客様のニーズの変化を敏感に感じ取り、ニーズに合わせて製品とサービスを改良する会社が生き残れるという教訓として使われます。
 しかし、ダーウィンはそんなことは言っていないそうです。生き残った生物は、「ただ運が良かっただけ」とのことです。父親のキリンが日々の努力の甲斐あって首が少し伸びたとしても、それが子孫に遺伝するとは考えにくいです。
 つまり、キリンは環境に適応しようとして、首が伸びた訳ではなく、突然の遺伝子の変異によって首が長い個体が生き残ったに過ぎないという事らしいのです。突然変異が遺伝子のミスコピーによって起こることがわかっています。「ミス」ですから、そこに目的などありません。いつ起こるかわからない偶然によって、親とは少し違う形姿の子が生まれるのです。

 生物がまるで自ら目的や方向性を持って進化してきたように見えるのは、後付けの作文です。環境に合うように進化してきたのではなく、たまたま持って生まれた形姿が環境に合っていたから、生き残った。進化の方向性を与えたのは、環境の方なのです。

 ダーウィンの進化論を私たちの教訓にするならば、環境の変化で生き残るために変異を意図的に作ることです。つまりお客様、協力会社様、職場の仲間などの縁を活かしたり、縁を積極的に増やしたりすることで、新しい技術や視点を得ることで自ら変異を起こすのです。
 変異が多いほど、環境の変化があっても生き残れる確率は高まります。これは会社だけでなく、個人にも当てはまると思います。