組織風土

2022/08/05【社長のメッセージ】

H社の排ガス、燃費試験をめぐる不正の規模はさらに膨れ上がっています。2日公表された特別調査委員の報告書は、不正が約20年もの長期間続いていた背景として、組織風土に関する問題点を指摘しました。
H社はリコールや燃費不正によるエコカー減税などの差額分の納付費用として400億円の損失を計上しました。さらに信用失墜によって、今後の業績に与える影響は計り知れません。

 報告書によりと、不正発生の原因として、
 ①下から上にものが言えない、『できない』と言えない組織風土。過剰な上意下達の気風やパワーハラスメント体質。
 ②開発と検査(認証)を同じ社員がおこなっていた。

「下から上にものが言えない風土」は、程度の差はありますが、どこの会社でも存在すると思います。当社では、故意の不正はないと認識しています。しかし本来報告すべき事が、報告できていない事があるのではないかと想像しています。
部下が現場の小さな異変に気づき、上司に報告すると、報告内容とは直接関係ない事について、辛口の指導を受けることがあります。上司は教育だと思ってやっていることが、部下にとっては精神的な苦痛を感じることもあります。その結果、「上司には、余計な報告はしないでおこう。」となってしまいます。
部下の仕事は、現場の異常に気づき上司に報告する事。上司の仕事は、その報告を受けて適切な対応を部下に指示することです。上司と部下が、親密にコミュニケーションがとれていないと、組織としての機能が果たせなくなってしまいます。

歴史は繰り返します。2000年、Y社の集団食中毒事件は記憶に新しい方もいらっしゃると思います。
Y社の製造課長は、脱脂粉乳に細菌が異常繁殖していることを把握していたが、上司の叱責を恐れてこれを隠ぺい。そのまま出荷してしまいました。結果的に1万5千人もの食中毒を発生させました。その後Y社の業績は急降下し、1/3の従業員を解雇することになりました。
製造課長が勇気を出して、上司に報告していれば防げていました。しかし製造課長を責めて、コンプライアンス(法令遵守)の教育をしても、「下から上にものが言えない風土」を改善しない限り、忘れた頃に再発します。コンプライアンス教育だけでは不十分です。
風土も改善する必要があります。そのためには、「上司は部下からの報告を、感謝の気持ちを持って聞く」、「部下は忙しい上司に聞いて貰えるように、手短にわかりやすく報告するスキルを磨く」必要があります。日々のコミュニケーションを通して、上司と部下の信頼関係は作られていきます。
また、間違いが発生しない仕組みを作るのも上司の仕事です。「作る人」と「検査する人」を別の社員がおこなうことも有効です。

お客様との信頼関係を壊すのは一瞬です。全社員一丸となって、小さな信頼を積み重ねていける組織風土を作っていきましょう。